こんなにくだらない本が、こんなにも泣けるなんて。 『死にたい夜にかぎって』 爪切男

2018年02月02日


友達が社会人になったら毎日飯を奢ってもらおうと思ってます。働きたくない東大生です。


さて、今回は本を読んだ感想です。いや、これ本当に凄かったです。多分映像化もするんじゃないかな。


爪切男 『死にたい夜にかぎって』 です。




てことで、その感動を伝えたい、と思って書きました。

帯はこんな感じでした。



以前HIUというところで書評の真似事をさせてもらっていたのですが、そんな感じで書きます。思ったより長くなりました。そのくらいすごい本でした。




人間誰しも死にたいような気持ちになる夜がある。


友達と喧嘩をした時であったり、家族とうまくいかなかったり、恋人とうまくいかなかったりする時だったり。それは人によって様々なんではないだろうか。


この本は、そんな死にたい夜を過ごしたことがある人なら、共感できる部分が大いにあると思います。


エッセイ形式のこの本は、主人公の「私」が、人間関係や、日々の生活に振り回される様子を描いたものです。


まず、高校生の頃に学校で一番可愛い子に笑顔が「虫の裏側に似ている」と言われる。初体験を車椅子の女性とする。初めてできた彼女はヤリマンで変な宗教にハマっている。


家庭環境も複雑で、実家に多額の借金があり、母親はおらず、父には殴られながら育てられる。


そんな中でもこの「私」は、辛い中でも喜びを見つけられる人間として生きている。


ここまでのざっくりした部分ですでにコンテンツの塊のような感じがします。


そんな中でも特に、「アスカ」との関係がメインで描かれています。


ネットで知り合い、出会ったその日に付き合った最愛の彼女「アスカ」。


そのまま流れで同棲をし、それが終わるまでの日常を絶妙に馬鹿げた、しかし心地よい表現でまとめています。


定職についているわけでもなく、女好き。自身はラッパーではないのに、ラッパーしかいない職場で仕事をこなす主人公の「私」。


音楽家になりたいと言いつつも特に努力をすることもなく、多量の薬を服用する。さらにヘビースモーカーで料理もできない「アスカ」。


この部分だけ読むと、ダメ人間パラダイスだと思うかもしれません。


安心してください。この本は全編を通してダメ人間パラダイスです。

 

「アスカ」以外の女の子も、凄まじいです。

 


「私」を屋上に呼び出し、「ダニが多そうな顔してるね」とビンタをし、「笑顔が虫の裏側みたい」と言い放つ山村さん


出会い系で出会って初体験の相手となった、車椅子のミキさん


中学時代に一緒にテトリスをやっていて、高校になってから再会した時にはまさかの自転車泥棒になっていた吉野さん


ラッパー界隈で有名な赤毛のビッチの岡田さん


歴戦の猛者であろう、喫茶店のウェイトレスで盛大に下ネタを言ってくるおばさんの南さん


テレクラで出会った、ものすごく身長の高い女の子


新聞配達の女の子で、朝の配達の1分間だけの会話を楽しんだ紺野さん


出会い系サイトで出会って、初めての彼女になった、ビッチでカルト宗教を信じている裕美ちゃん


おっぱいを吸わせてくれた実の祖母


池袋で出会った、「自分のチンコのことを初めて火を見た人類のようにしゃぶってほしい。」という無茶ぶりに応えてくれた風俗嬢



そのどれもに、ドラマがあって、それぞれの別れがある。


別れ方はいいものとは限らないし、ドラマチックなものである必要だってない。なんとなく、いや〜な感じで別れて会わなくなったり、逆に、すっきりとした別れ方をすることもある。


それがかえってリアルな感じがしますね。


出てくる女の子は曲者ばかりだし、なんなら登場人物にまともな人は一人もいないくらい。

 

しかし、そんなダメ人間が、毎日を生きている。

 

それは必死であったり、ダラダラしたり、いろいろな生き方があると思います。でも、みんな生きている。

 

「アスカ」はかなりのメンヘラで、薬を減らそうとして禁断症状を起こし、「私」を殺そうとすることがしばしばあります。

 

そんな命の危険を感じている日々でさえも、「私」は楽しもうとします。首が絞められてもいいように首ブリッジで首を鍛えたり、首を絞められるたびにポイントを貯めるポイントカードシステムを作ってしまったりします。


完全にイかれてますね。

 

しかも、「アスカ」は浮気もものすごくします。その浮気に対して「私」がバランスを取るための方法が風俗に行くこと。シンプルで、クールな解決策ですね。

 

命の危険を感じたり、浮気されたりしながらも、日々の生活を楽しもうとする「私」。何か大きなことが起きても、それすらも楽しもうとします。

 

タイトルが『死にたい夜にかぎって』な割に、主人公はなかなか死にたくなる感じがしませんね。

 

そんな同棲生活は6年もの長期間続きます。6年。ちょっと想像もできないくらい長いです。

 

その長期間を綴ったこの作品の濃度は相当なものです。

 

様々な女性に振り回され、また、自らそういった地雷に突っ込んでいくきらいさえある「私」

 

暴れたりすることもあり、明らかな地雷であるがなんとなくしっくりとくるパートナーの「アスカ」

 

二人とも不器用です。陳腐な言い方にはなってしまいますが。

 

しかし、その不器用さが段違いです。「不器用な二人が惹かれ合う」と書いてある少女漫画でも、同棲している相手を日常的に殺そうとしたりはしないし、バンバン浮気をしたりもしません。

 

幸せの形は人によって違います。どんなに他の人から見たら不幸そうに見えても、本人が幸せだと感じるなら、それは幸せです。

 

ペアルックを着ることが幸せな人もいれば、相手に尽くすことが幸せな人もいる。うどんが好きな人も、側が好きな人も、どっちもいるじゃないですか。

 

「私」はこれが愛だといいます。僕も、こんなに純粋な愛はなかなかないと思います。

 

愛とは何か。よく問われる問いではあると思うし、明確にそれに対して答えを出すことはきっとできません。

 

それでも、この本の中には一つ、確実な愛があります。

 

なんとなく、メンヘラや風俗嬢、ビッチに嫌悪感を持っている人は、ぜひこの本を読んでみてほしいです。

 

読み終わったらきっと、彼ら・彼女らも生きているということ、その生活には苦しいことも楽しいこともあるということ、もしかしたら、僕たち以上に味わい深い人生を歩んでいるかもしれないということ、そんなことを感じるようになるかもしれない。

 

表紙の煽り文句の下品で面白おかしい感じがひしひしと伝わって来ます。それでも、ものすごく泣ける本です。

 

「最高に楽しい時間の無駄遣い」

 

この本を一言で表すなら、きっとその言葉になると思います。

 

このアホみたいなブログを読んでいる人の中にももしかしたら、将来の夢や目標を持って、それに邁進している人もいるかもしれません。


東大生にはそういう人も多いでしょう。それはそれでいい人生だと思うし、そのまま突き進んでいってほしい。

 

でも、きっとそうじゃない人もたくさんいるでしょう。


やりたいことがない。欲もない。大学生活で意味のあることをしてこれなかった。


それによって絶望して、死にたいと思う人だって中にはいるのかもしれない。

 

また、これまでの人生でやらかした大きな失敗に引きずられて、したいと思うことができなかったり、何度も同じ失敗を繰り返して死にたいと思ったり、なんとなく生きていたくないと思ってしまう人もいる。

 

でも、ふと振り返ってみて、あなたの人生はそんなに悪いものだったでしょうか。

 

「そんな価値のないことばかりして。」「遊んでばっかりでどうするの。」そんなことを言われたり、周りの留学に行った友達や起業した友達を見て、その差に凹んだり、惨めな気持ちになったりすることだってあったかもしれません。

 

でも、あなたのやってきたことは、楽しいことではなかったですか?

 

他人に認められるような価値や意味なんか、本当はなくたって構わないんです。

 

ただ楽しいだけでも、ただ幸せだと感じているだけでもいいんです。立派だなんて、誰にも思われなくたっていい。

 

時には死にたいと思うことだって、人生のスパイスになるかもしれない。

 

自分に正直に楽しく生きることが一番なんだ、ということを感じさせてくれる、そんな一冊です。

 

めっちゃ長くなりましたね。自分でもびっくり。

 

『死にたい夜にかぎって』本当にオススメの作品です。

 

それでも読まないと、メンヘラや、しょうもない下ネタなんて見たくもない!そう思う人がいたら、残念ですけど仕方ないです。

 

僕自身、この本には相当衝撃を受けましたし、好き嫌いはあると思います。

 

なんとなく話した人を好きになったり、なんとなく食べたものがすごく好きになったりするのと同じように、何気なく手に取った本や、何気なく勧められた本を読んでみたら、何か変わることだってあるんだな、と思わせてくれました。


死にたい人も、特に死にたいと思わない人も、この本を読んだらきっともっと自分のことや、人のことを好きになれるんじゃないかと思います。

 

長くなりましたがこの辺で!本当に面白いよ!!


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