滑稽なほど不憫。でも生きて、幸せ。それだけでいいじゃない。『ここは、おしまいの地』 こだま

2018年02月10日

働きたくなさをこじらせて、カフェで隣の社会人に「社会出ると何がいいんすか?」と聞きました。


どうも、働きたくない東大生です。


さて、今回はこの本についてです。どん。


こだまさんの 『ここは、おしまいの地』です。


この本、かなりエグいです。


以前紹介した、爪切男さんの『死にたい夜にかぎって』が、「特定の相手との対人関係」の中でのエッセイであるなら


『ここは、おしまいの地』は「人」との関係を極端に苦手とする人のエッセイです。


著者の「私」は、北海道の限界集落に生まれた長女で、母はヒステリック、父は陰気という家庭環境に生まれます。


左目の近くにあるあざと、耳の後ろにある大きなホクロをコンプレックスとして抱えた「私」。


そのコンプレックスに加え、それを同級生にからかわれたことで、極端に内向的な性格になってしまう。


それだけでなく、小学生の時に患った肺炎が悪化して呼吸器官が極端に弱く、三十代にして肺病を患う。


なぜか首の骨がおかしくなり、「転んだだけで死ぬ」と医者に宣告され、手術で首にボルトを埋め込む。


大学を出てから教員になったが、学級崩壊を経験して精神を患ってしまう。


子供が産めない体である。


それだけでは飽き足らず、偶然というにはあまりにも高い頻度で不幸な出来事に見舞われる。


一般的にいう、「絶望的」とは、こういうことなのかもしれません。


それでも、生きている。笑って、生きている。


首に埋め込まれた三本のボルトをレントゲン写真で確認して、「鳥居」と言ってありがたがったり、祖父の死も笑い話として悲観的にならない。入院生活のリハビリの中でも楽しみを見つける。


しかし、「私」の不幸引き寄せ体質がもうめちゃくちゃすぎて面白い。


新しく引っ越した家が「ものすごく臭い」


そんなこと、経験したことがありますか。


引っ越し先の家が「ものすごく臭い」


臭すぎて、夫から「頼むからこの家で料理を作らないでくれ。」と言われる。


しかし、そんな家に住むことによって「私」は、「当たり前のことがどれだけ絶妙なバランスの上に成り立っているのか」ということを感じ、感謝する。









いや、そんなことある?ってなるくらいに極端な発想です。


しかし、その発想は、これまでの「やばすぎて逆に絶妙なバランス」の上にできている、著者ゆえの価値観なのかもしれません。


この本は、全体を通して、暗くて胸がどんより暗くなるような話が進んでいきます。


不安定な家庭環境の話、身体的なコンプレックスの話、過酷な生活環境の話、病気の話、などなど。


不幸になる要素を集めて煮詰めてドロドロにしてそれをさらに漉してもっと煮詰めたような、そんな人生。


劣等感はたくさん感じるし、うまく生きたいと思っていたこともある。


それでも、不遇な状況をやんわりと受け入れ、生きていることの幸せを感じながら生きている。


強く断言できる人のことを「強い人」と言って憧れているが、この人の方がはるかに強いのでは?となります。


持っているマイナスがどんなに多くても、自分が幸せだと感じられればそれでいい。


本当に大切なのは自分が満足した生活をできているかどうかだということを教えてくれます。



限界集落に住んでいた時の話、幼少期のコンプレックス、中高時代にできるだけ陰を潜めて生きてきた経験、就職してからも失敗した話、新居での生活環境が最悪な話、ここにはあらゆる不幸の種が撒かれている。


これより不遇な状況に生きる人はなかなかいないのではないだろうか。


今、自分が不遇で、不幸だと感じている人に、この一冊をすすめたいです。


もしかしたら、「こんなのより俺のが辛い」とか、「だからなんだよ」とかなるかもしれません。


それでも、この本を読んだ人の中にはきっと「今のままでもいいのかもしれない」とか、「なんだかんだなんとかなるかもしれない」とか、そういう風に思う人も出てくるんじゃないでしょうか。


もし、そうやって読んだ本によって幸せになれるなら、それは本当に素晴らしいことだと思います。


「いや、お前が書いたわけじゃないやろ」って言われるかもしれません。


しかし、読む側だからこそ、伝えられる良さもあると思います。


読んでいる途中で重すぎて気分が悪くなったり、なんか泣きそうになったりもしました。


でも、この本を読んで良かったと、心から思います。


人の心を動かすような本は、全然刺さらない人や、むしろ読んでてムカつく人とかもいると思います。


それでも、この本を読んでみて、それによって幸せに生きられる人が増えるといいなあ、と心から思います。





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